僕は鉄格子の隙間から外を見ると、
高層ビルの氷漬けになった窓に写り込む
満開の桜に気付いた。
その花弁は風に運ばれ僕の所に届いたが、
求めていたのは、薄暗いガラスの向こう側にある、
不幸と抱き合わせの幸福だった。
朝になっても眠らずに「狐火」は続く。
陽が差し姿を覆い隠しても、
黒煙の様な溜息だけは、はっきりと見えた。
片足立ちの男の背中を押して、
お互い様だと笑う。
【歪信仰】
洗い流す前に醜い世界に蓋をした、一面の曇り空。
霞んだ陽だけが、構わず沈む。
燃え尽きる前に、飽きられる前に、
安っぽい詩に騙される前に、音もなく沈む。
反対側から燃えカスが昇る前に、沈む。
自由讃える時代の咎
時代は恐れを、
恐れは救いの形を変えるから、
僕たちは今のままじゃ居られない。
【雨】
頭上を漂うのはゴミばかり。
海に昇った朝日は灰色の光を放ち、
崖下の空を照らす。
逆巻く夕立の柱に、逆行する一筋の涙。
聞いた話じゃあこれが美しいって、
ただの笑い話だ。